がんは、生涯のうち男女ともに2人に一人がかかると推計されています。がんの部位別では、胃がんは男性9人に一人、女性19人に一人がかかると推計されています。(2013年データに基づく 国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」)
がんは恐ろしい病気ですが、定期的にがん検診を受けて、早く見つけて、早く治療することで、予後は良好です。そのためにも、定期的にがん検診を受診することが必要です。
胃がんの特徴と症状とは
胃の内側から見ると、がんの場所は表面がへこんでいることか多いのでわかります。
しかし、胃がんの数パーセントは、「スキルス胃がん」といって、胃の表面にはっきりとあらわれず、胃の壁の中でひろがる性質をもっています。
若い女性に比較的多くみられるのが特徴です。
胃がんは、20歳代の若年層にもみられますが、主に40歳代から増加しはじめ、60歳代がピークです。
国内における胃がん患者数は、133,900人(2016年)とがん全体で最多です。
日本だけでなく、世界でもっとも高い発症率ですが、近年は徐々に減少傾向にあります。
また、以前はがん全体における死亡率もトップでしたが、検診などで早期発見されるようになり、死亡率も下かってきました。
【胃がんの症状】初期はほとんど無症状 胃炎に似た症状は注意
早期の胃がんでは、特徴的な症状はなく、上腹部の痛み、胃の膨満感、胸焼け、げっぷ、吐き気などがみられることがあります。
患部からの出血による吐血や下血がみられることもあります。
はじめのうちは空腹時や食後にあらわれることか多く、しだいに慢性的におこるようになります。
しかし、胃がんに特徴的な症状というわけではないので、胃炎や胃潰瘍と思いこんでしまうことか多いようです。
がんが進んでくると、食欲がなくなったり、体重か減ったり、貧血になったりすることもあります。
また、食べものがつかえたり、胃のしこりを外から触れることかできるなど、しだいにはっきりした症状があらわれてきます。
胃がんの原因と予防方法
胃がんの原因には食生活が深く関係していると考えられています。
その中でも、とくに塩分の多い食品かあげられます。
塩分をとる量の多い地域では、胃がんにかかる割割合が高いというデータかあります。
そのほか、魚や肉の焼けこげや、熱すぎる食べ物、喫煙、過度の飲酒も危険因子です。
また、「ピロリ菌」という胃の粘膜に住みつく細菌の感染も、原因の一つといわれています。
逆に、野菜や果物に多く含まれるビタミンCには、発がん物質の合成を防ぐ効果があるとされています。
そのため、胃がんを予防するには、塩分をなるべくひかえて、野菜を中心にしたバランスの良い食生舌に改めることが効果的とされています。
また、禁煙を心がけたり、飲酒をひかえたりすることも大切です。
胃がんの最新検査方法
日本では胃がん検診(スクリーニング検査)が非常にさかんです。
そのため、国立がんセンターに訪れる患者さんのうち、約半数は、胃がん検診によってがん であることか疑われた人たちです。
全国の地方自治体などで実施されている無料の胃かん検診では、「胃X線二重造影」がおこなわれます。
胃X線二重造影とは、バリウムを飲み、発泡剤でお腹をふくらませてから、 X線撮影をする検査です。
これで5ミリくらいの小さながんも見つけることができます。
この検査でがんが疑われた場合は、先端にカメラのついた内視鏡(胃カメラ)で胃の中を直接のぞいて調べます。
人間ドックなどの有料の胃がん検診では、胃X線二重造影に加え、 この内視鏡検査を実施することもあります。
胃がんの場合、胃内部の表面かへこんだものが多いので、内視鏡で見るとすぐにわかります。
最近では技術の進歩で、赤くなっているなど、色の変化だけでも見分けることかでるようになりました。
このようながんの疑われる部分か見つかった場合は、 それをつまみとって顕微鏡で調べます。
これを 「生検」といいます。
生検でがん細胞か見つかれば、がんであることが確定します。
画像検査でがんの広かりをチェック 進み具合によっては大腸も検査する
がんと診断されたら、次に超音波内視鏡検査やCTといった画像検査でがんかどこまで広がっているのか、また周囲の臓器や離れた臓器に転移していないかを調べます。
超音波内視鏡検査は、先端に超音波を発して胃の断層写真を撮影できる装置がついた内視鏡を用いる検査です。
胃壁の断層画像が撮影できるので、がんの深さや、胃壁の表面にあらわれない「スキルス胃がん」の進行状態のほか、胃壁に近いリンパ節への転移の有無などを診断できます。
一方では、身体の輪切り画像を撮影し、腹部や胸部に異常かないか調べます。
肝臓やリンパ節への転移や周辺臓器への浸潤度合いを診断できます。
治療法を決定したり、手術の前におこなわれる検査です。
がんの進行度によっては、胃のすぐ近くにある横行結腸に胃がんか広がっていないか、大腸に異常かないかなどを手術の前に調べます。
その場合は、注腸レントゲン検査をおこないます。
これは、肛門からバリウムと空気を入れて、大腸を撮影する検査方法です。
また、腫瘍マーカーという血液検査がおこなわれる場合もあります。
これは、がん細胞から出される特殊なたんばく質の有無を調べるための検査です。